当サイトの公務員関連の記事では、年収の地域差を説明するときに 繰り返し地域手当という言葉が出てきます。
この記事では、その地域手当の支給率そのものを全1,721自治体分並べて、 年収差のどれだけを説明しているのかを検証します。
数値は総務省「地方公共団体別給与等の比較」(令和6年)によるものです。 出典と算出方法はこちらに記載しています。
地域手当とは
国家公務員・地方公務員の給与は、基本給(給料表)+各種手当で構成されます。 地域手当はそのうちのひとつで、民間賃金水準の高い地域に勤務する職員に支給されます。
- 支給率は0%から20%まで段階的に設定されている
- 上限20%は東京23区
- 基本給に対する割合なので、同じ級・同じ号給でも勤務地で年収が変わる
給与制度としては「地域による物価・賃金水準の差を埋める」ための仕組みですが、 結果として公務員の年収差の最大の要因になっています。
4分の3の自治体は支給率0%
まず分布を見ます。
| 支給率 | 団体数 | 平均年収 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|
| 15〜20% | 59団体 | 690万円 | 40.9歳 |
| 10〜15% | 87団体 | 668万円 | 41.6歳 |
| 5〜10% | 168団体 | 631万円 | 41.6歳 |
| 0%超〜5% | 102団体 | 620万円 | 42.0歳 |
| 0% | 1,305団体 | 575万円 | 41.8歳 |
支給率0%の自治体が1,305団体、 全体の約4分の3を占めます。 地域手当は「全国の公務員がもらっているもの」ではなく、 都市部の自治体に限られた手当です。
支給率0%(575万円)と 15〜20%(690万円)の差は 690−575万円です。
注目すべきは平均年齢がほぼ同じであることです。 どの帯も41歳前後で、年齢構成の違いでは説明できません。
年収差を説明する力は、他の要因より強い
年収を左右しそうな3つの要因について、それぞれ相関を取りました。
| 要因 | 年収との相関 |
|---|---|
| 地域手当の支給率 | +0.67 |
| ラスパイレス指数 | +0.60 |
| 平均年齢 | +0.34 |
地域手当がもっとも強く効いています。
ラスパイレス指数は国家公務員を100としたときの給与水準を示す公式指標ですが、 給料月額(基本給)ベースで地域手当を含みません。 そのため指数が同じでも、地域手当の支給率が違えば年収は変わります。 ラスパイレス指数で見る地方公務員の給与水準で 指数そのものについては詳しく検証しています。
平均年齢の相関が+0.34にとどまるのは、 在籍者の年齢構成より制度のほうが強く効いていることを意味します。
都道府県・政令指定都市ではさらに強く効く
| 区分 | 平均支給率 | 年収との相関 |
|---|---|---|
| 政令指定都市 | 9% | +0.84 |
| 都道府県 | 3.4% | +0.76 |
| 市区町村 | 1.9% | +0.67 |
政令指定都市では+0.84と、ほぼ地域手当だけで年収が決まります。
政令指定都市は人口50万人以上の大都市に限られ、 給与制度も職員構成も似通っています。 そのなかで差を生んでいるのが地域手当だ、ということです。
支給率20%は東京23区だけ
上限の20%が適用されるのは、全1,721自治体のうち23団体。 東京23区です。
市区町村職員の平均年収で見たとおり、 23区は上位を独占しているわけではありません。 支給率が同じ20%でも、23区のあいだで年収は58万円ひらきます。 その差の中身は 東京23区 職員の年収ランキングで分解しました。 給料本体ではなく地域手当以外の諸手当で開いています。
地域手当は年収差の最大の要因ですが、唯一の要因ではありません。 県内のどこを受けるかで年収が変わるでは、 地域手当の支給率が同じ自治体どうしでも 県内で平均125万円の開きが残ることを確かめています。
受験先を選ぶときにどう使うか
- 志望自治体の地域手当支給率を最初に確認する。 年収差のもっとも大きな部分がここで決まります。 確認手順は受けたい自治体の年収を自分で調べる方法に記載しています
- 支給率0%の自治体が4分の3を占めることを知っておく。 「公務員は地域手当があるから高い」は、大半の自治体には当てはまりません
- ただし生活コストとセットで考える。 地域手当が高い地域は、そもそも物価・住居費が高い地域です。 額面の差がそのまま可処分所得の差になるわけではありません
数字を読むときの注意
- 支給率は「団体支給率」(実際に支給されている率)です。 国が基準として定める率とは別で、両方が公表されています
- 対象は一般行政職です。 技術職・保育士・消防職・警察職などは含まれません
- 年収は推計値です。 平均給与月額 × 12ヶ月に、同じ調査で公表されている期末・勤勉手当の年額(実額)を加えて換算しています
- 相関は因果ではありません。 地域手当が高い地域は民間賃金も高い地域であり、 基本給の水準や職員構成も同時に違います
- 支給率は毎年4月1日時点の数値です