「公務員は優遇されている」という話の根拠として、 国家公務員と地方公務員の給与が引き合いに出されることがあります。

これを判断するための公式な指標がラスパイレス指数です。 国家公務員の給与水準を100としたとき、その自治体が何にあたるかを示します。

この記事では、総務省が公表している全1,721市区町村の指数を使って、 実際に何割の自治体が国を超えているのかを数えます。

数値は総務省「地方公共団体別給与等の比較」(令和6年)によるものです。 出典と算出方法はこちらに記載しています。

結論:9割の市区町村は国より低い

区分 団体数 指数の平均 100を超える団体 割合
政令指定都市 20 100.2 11団体 55.0%
都道府県 47 99.5 13団体 27.7%
市区町村 1,721 96.9 160団体 9.3%

市区町村で国家公務員の水準を超えているのは9.3%、 1,721団体のうち160団体だけです。 残る9割は国より低い水準にあります。

一方、政令指定都市は55.0%が100を超えます。 団体の規模によって傾向がはっきり分かれます。

ラスパイレス指数とは何か

この指数は、単純に「給与が高いか低いか」を比べたものではありません。

職員の学歴構成と経験年数を国家公務員と揃えたうえで、 給料月額を比較した値です。 年齢構成の違いによる見かけの差を取り除く設計になっています。

そのため「若い職員が多いから平均年収が低い」という自治体でも、 ラスパイレス指数は必ずしも低く出ません。 制度としての給与水準そのものを比べられるのが、この指数の意味です。

なお、この指数は給料月額(基本給)ベースで、地域手当は含みません。 地域手当を加味した「地域手当補正後」の指数も別に公表されています。

指数と年収の関係

指数が高い自治体ほど年収も高いのか、実データで確認します。

ラスパイレス指数 団体数 平均年収
101以上 58団体 643万円
99〜101 324団体 629万円
97〜99 539団体 600万円
95〜97 461団体 578万円
95未満 339団体 554万円

指数と年収の相関は+0.60です。 はっきりした正の相関があり、指数95未満の自治体(554万円)と 101以上の自治体(643万円)では 643−554万円の開きがあります。

ただし相関は1ではありません。指数が同じでも年収は変わります。 地域手当が指数に含まれないためで、 同じ指数なら地域手当の支給割合が高い自治体のほうが年収は上になります。

平均年齢のほうが効かない

もうひとつ、年収を左右しそうな要素として平均年齢があります。 在籍者の平均なので、ベテランが多ければ平均年収は上がるはずです。

実際に相関を取ると次のようになります。

区分 平均年齢の範囲 年収との相関
市区町村 41.7歳が平均 +0.34
政令指定都市 42.0歳が平均 +0.12
都道府県 42.5歳が平均 -0.01

市区町村では平均年齢と年収に+0.34の相関がありますが、 都道府県では-0.01とほぼ無関係です。

理由は年齢のばらつきの違いです。 都道府県庁は採用が安定していて平均年齢が狭い範囲に収まるため、 年齢差が年収差を説明しません。 市区町村は小規模な町村を含むため平均年齢の幅が広く、そのぶん効いてきます。

年収を決めているのは、年齢構成よりも給与制度そのものというのが、 指数の相関(+0.60)と年齢の相関(+0.34)の差が示すことです。

年齢帯で見ると

参考として、平均年齢の帯で区切った年収も出しておきます。

平均年齢 団体数 平均年収
44歳以上 201団体 609万円
42〜44歳 582団体 604万円
40〜42歳 630団体 589万円
38〜40歳 268団体 570万円
38歳未満 40団体 536万円

平均年齢が上がるほど年収も上がる関係は確かにありますが、 その幅は指数で切ったときより小さくなっています。

受験先を選ぶときにどう使うか

  1. 志望自治体のラスパイレス指数を確認する。 給与制度としての水準がわかります。 確認手順は受けたい自治体の年収を自分で調べる方法に記載しています
  2. 指数だけで判断しない。 地域手当が含まれないため、 指数が低くても地域手当が高ければ手取りは上になります
  3. 「公務員は優遇されている」は市区町村には当てはまりにくい。 9割が国家公務員の水準を下回っています

数字を読むときの注意

  • ラスパイレス指数は給料月額(基本給)ベースで、地域手当・時間外手当を含みません
  • 対象は一般行政職です。 技術職・保育士・消防職・警察職などは含まれません
  • 年収は推計値です。 平均給与月額 × 12ヶ月に、同じ調査で公表されている期末・勤勉手当の年額(実額)を加えて換算しています
  • 指数が低いことが「不当に安い」を意味するわけではありません。 地域の民間賃金水準に合わせた結果でもあります
  • 指数は毎年4月1日時点の数値です

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