「終身雇用の会社のほうが給料が上がる」 「離職率の高い会社は待遇が悪い」
どちらもよく聞く話です。 上場企業3,790社の実データで確かめます。
有価証券報告書には平均勤続年数が記載されています。 これは在籍している従業員が平均して何年その会社に勤めているかを示す数字で、 定着率のおおまかな目安になります。
結論:ほとんど関係がない
平均勤続年数と年収の相関係数は+0.12でした。
参考までに、当サイトで検証した他の要因と並べます。
| 要因 | 年収との相関 |
|---|---|
| 平均年齢(企業) | +0.17 |
| 平均勤続年数(企業) | +0.12 |
年齢より、さらに弱いという結果です。
勤続年数帯で見ると、逆転が起きている
| 平均勤続年数 | 社数 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 20年以上 | 218社 | 721万円 |
| 15〜20年 | 1,143社 | 729万円 |
| 10〜15年 | 923社 | 694万円 |
| 5〜10年 | 851社 | 641万円 |
| 5年未満 | 601社 | 689万円 |
一直線ではありません。2つのことが起きています。
① 5年未満の会社が、5〜10年の会社より高い。 689万円 対 641万円で、 勤続が短いほうが689−641万円高くなっています。
② 20年以上でピークアウトする。 15〜20年(729万円)が最も高く、 20年以上(721万円)はそれを下回ります。
勤続が短くて年収が高い会社とは
①の逆転がなぜ起きるのか、勤続5年未満の会社を業種で分解します。
最も多いのはIT・通信(220社・平均676万円)、次いで サービス(189社・平均640万円)。 そして少数ながら製薬・医療(19社・平均930万円)が入ります。
ここに含まれるのは主に次のような会社です。
- 設立から日が浅い会社 … 会社の歴史が短ければ勤続年数は構造的に短くなる。 年収が低いからではない
- 中途採用が中心の会社 … 外部から経験者を採るため勤続年数が伸びにくい。 即戦力を高い給与で採用していることが多い
- 持株会社 … 本社機能に絞られ、グループ内の異動で在籍年数が短く出る
勤続年数の短さは「待遇が悪い」の指標にはなりません。 むしろ高年収の会社に、勤続の短い会社が一定数含まれます。
逆に、勤続が長くて年収が高くない会社もある
20年以上の帯が15〜20年を下回るのも同じ構造です。
勤続20年超は、転職市場が成熟していない業種や地方の企業に多く見られます。 定着率が高いことと給与水準が高いことは、必ずしも一致しません。
「長く勤める人が多い」は働きやすさの指標にはなっても、 年収の高さの指標にはならないというのが、このデータの示すところです。
年齢との組み合わせで見る
勤続年数は単独ではなく、平均年齢とセットで見ると意味が出ます。
- 平均年齢が高く、勤続年数も長い … 新卒中心で定着率が高い伝統的な会社
- 平均年齢が高く、勤続年数は短い … 中途採用中心。経験者を集めている
- 平均年齢が若く、勤続年数も短い … 設立が新しい、または若手中心
- 平均年齢が若く、勤続年数は長い … 新卒採用中心で離職が少ない
「平均年齢 − 平均勤続年数」がおおよその入社年齢にあたります。 これが25歳前後なら新卒中心、30歳を超えるなら中途採用が多い会社と読めます。
当サイトの企業ページには平均年齢と平均勤続年数の両方を掲載しているので、 気になる企業で確認できます。
転職を考えるときにどう読むか
- 勤続年数の短さを理由に候補から外さない。 設立の新しさや中途採用中心の方針を反映しているだけのことがあります
- 同じ業種の中で比較する。 業種をまたぐと意味が薄くなるのは、年齢の場合と同じです
- 年齢とセットで見る。 入社年齢の目安がわかり、 新卒中心か中途中心かの見当がつきます
数字を読むときの注意
- 平均勤続年数は提出会社(単体)の数値です。 連結子会社は含みません
- 在籍者の平均です。退職した人は含まれないため、離職率そのものではありません
- 会社の設立年に強く影響されます。 設立5年の会社は勤続5年を超えられません
- 相関は因果ではありません。 業種・企業規模・設立年が同時に効いています
- 有価証券報告書を提出している企業が対象で、中小企業は含まれません