公務員の年収を扱うとき、退職金を抜きにした比較は片手落ちになります。 当サイトの年収ランキングも、民間との比較も、 これまで在職中の年収だけを見てきました。
総務省「地方公共団体別給与等の比較」には、団体別の退職手当の実額が 公表されています。これを取り込んで、退職金まで含めるとどう変わるのかを確認します。
数値は推計ではなく、総務省が公表している平均支給額そのものです。
定年退職者の平均支給額
| 区分 | 集計団体数 | 平均 | 中央値 | 最高 | 最低 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政令指定都市 | 20 | 2,310万円 | 2,310万円 | 2,475万円 | 1,999万円 |
| 都道府県 | 47 | 2,265万円 | 2,267万円 | 2,483万円 | 1,414万円 |
| 市区町村 | 382 | 2,196万円 | 2,202万円 | 2,841万円 | 1,370万円 |
いずれも一般行政職の数値です。
区分による差はほとんどありません。年収では都道府県653万円と 市区町村592万円で61万円の開きがありますが、 退職金の差はそれより小さくなっています。
退職手当の算定は退職時の給料月額 × 勤続年数に応じた支給率で決まります。 地域手当や時間外勤務手当は算定の基礎に入りません。 年収の差はほぼ地域手当で生まれているため、 年収で開いた差が退職金にはそのまま乗らない、という関係になります。
定年まで勤めるかどうかで倍近く変わる
同じ表には「全退職者」の平均支給額も載っています。 自己都合退職や在職中の離職を含めた数字です。
| 区分 | 定年退職者等 | 全退職者 | 差 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 都道府県 | 2,265万円 | 1,139万円 | 1,126万円 | 2.0倍 |
| 政令指定都市 | 2,310万円 | 1,225万円 | 1,085万円 | 1.9倍 |
| 市区町村 | 2,196万円 | 1,035万円 | 884万円 | 1.7倍 |
全退職者の平均は、定年退職者のおよそ半分です。
退職手当の支給率は勤続年数に対して直線ではなく、勤続20年を超えたあたりから 急に上がる設計になっています。さらに自己都合退職は定年退職より支給率が低く抑えられます。 この2つが重なるため、途中で辞めた場合の受取額は大きく下がります。
「公務員は退職金が手厚い」と言われるとき、その根拠になっているのは 定年まで勤め上げた場合の数字です。
退職金を年収に直すと、民間との位置関係が変わる
退職金は一度に受け取るお金なので、年収とそのままでは比べられません。 勤続年数で割って「年あたりいくらか」に直すと、年収に足せる形になります。
22歳で入り60歳で定年退職する場合の勤続年数を38年として計算します。
| 区分 | 平均年収 | 退職金の年あたり換算 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 都道府県 | 653万円 | +60万円 | 712万円 |
| 政令指定都市 | 687万円 | +61万円 | 748万円 |
| 市区町村 | 592万円 | +58万円 | 650万円 |
この額を、当サイトが収録している上場・非上場企業3,852社の分布に置き直します。
| 区分 | 年収だけで見たとき | 退職金を足したとき |
|---|---|---|
| 都道府県 | 上回る企業 52.8% | 37.5%(1,443社) |
| 政令指定都市 | 44.0% | 31.0% |
| 市区町村 | 67.9% | 53.8% |
都道府県庁の職員を上回る企業は、年収だけなら52.8%ですが、 退職金を含めると37.5%まで減ります。 市区町村でも67.9%から53.8%へ下がります。
年収の額面だけを並べた比較では、この差は見えません。
ただしこれは公務員に有利な条件での計算です。 理由は次の節に書きます。
この計算が公平でない点
上の比較には、はっきりした限界が3つあります。
民間企業の退職金を引いていません。 当サイトが持っている企業データは 有価証券報告書の平均年間給与で、退職金の額は含まれていません。 民間企業にも退職金制度はあります。上の表は「公務員の退職金だけを足した」比較なので、 その分だけ公務員側に有利です。差の向きではなく、 「退職金を含めると位置が変わる」という事実のほうを読んでください。
38年勤続は最も長いケースです。 中途で入った職員、途中で辞めた職員は これより短くなります。前の節のとおり、途中で辞めると受取額は半分近くまで下がります。
定年は65歳へ引き上げられている途中です。 2023年度から2年ごとに1歳ずつ上がり、 2031年度に65歳定年となります。勤続年数も支給額も、今後変わっていきます。
数字が大きく振れる団体がある
最低額として出ている和歌山県庁の1,414万円は、 その県の退職金が低いという意味ではありません。
同じ団体の全職種でみた定年退職者の平均支給額は2,202万円で、 全国平均の2,268万円と変わりません。
この表はその年に定年退職した職員の平均です。 一般行政職に限ると対象人数が少ない団体があり、 数人の内訳で平均が大きく動きます。単年の数字を制度の差として読まないでください。
同じ理由で、市区町村は集計できた団体が382団体にとどまります。 1,721団体のうち、その年に一般行政職の定年退職者がいなかった団体では 数値が公表されないためです。
市区町村の上位
集計できた382団体のうち、支給額が高い20団体です。
| 順位 | 自治体 | 定年退職者等の平均支給額 |
|---|---|---|
| 1 | 国立市役所 | 2,841万円 |
| 2 | 岡崎市役所 | 2,744万円 |
| 3 | 柏市役所 | 2,661万円 |
| 4 | 岐阜市役所 | 2,575万円 |
| 5 | 町田市役所 | 2,565万円 |
| 6 | 豊川市役所 | 2,564万円 |
| 7 | 武豊町役場 | 2,527万円 |
| 7 | 奈良市役所 | 2,527万円 |
| 9 | 三鷹市役所 | 2,519万円 |
| 10 | 東海市役所 | 2,502万円 |
| 11 | 金沢市役所 | 2,497万円 |
| 12 | 東郷町役場 | 2,496万円 |
| 13 | 掛川市役所 | 2,491万円 |
| 14 | 小松市役所 | 2,488万円 |
| 15 | 深谷市役所 | 2,471万円 |
| 16 | 吹田市役所 | 2,459万円 |
| 17 | 高梁市役所 | 2,457万円 |
| 18 | 貝塚市役所 | 2,456万円 |
| 19 | 大分市役所 | 2,455万円 |
| 20 | 東大阪市役所 | 2,454万円 |
参考として、都道府県の全順位も載せます。
| 順位 | 都道府県 | 定年退職者等の平均支給額 |
|---|---|---|
| 1 | 東京都庁 | 2,483万円 |
| 2 | 大阪府庁 | 2,419万円 |
| 3 | 岐阜県庁 | 2,404万円 |
| 4 | 愛知県庁 | 2,396万円 |
| 5 | 岩手県庁 | 2,374万円 |
| 6 | 福岡県庁 | 2,368万円 |
| 7 | 山形県庁 | 2,361万円 |
| 8 | 長野県庁 | 2,353万円 |
| 9 | 宮城県庁 | 2,350万円 |
| 10 | 神奈川県庁 | 2,347万円 |
| 11 | 岡山県庁 | 2,337万円 |
| 12 | 三重県庁 | 2,330万円 |
| 13 | 沖縄県庁 | 2,329万円 |
| 14 | 山梨県庁 | 2,326万円 |
| 15 | 静岡県庁 | 2,324万円 |
| 16 | 京都府庁 | 2,321万円 |
| 17 | 新潟県庁 | 2,316万円 |
| 18 | 群馬県庁 | 2,315万円 |
| 19 | 山口県庁 | 2,314万円 |
| 20 | 大分県庁 | 2,311万円 |
| 21 | 青森県庁 | 2,298万円 |
| 22 | 奈良県庁 | 2,294万円 |
| 23 | 徳島県庁 | 2,272万円 |
| 24 | 石川県庁 | 2,267万円 |
| 24 | 熊本県庁 | 2,267万円 |
| 26 | 栃木県庁 | 2,261万円 |
| 27 | 兵庫県庁 | 2,260万円 |
| 28 | 鹿児島県庁 | 2,258万円 |
| 29 | 富山県庁 | 2,257万円 |
| 30 | 愛媛県庁 | 2,256万円 |
| 31 | 佐賀県庁 | 2,251万円 |
| 32 | 島根県庁 | 2,237万円 |
| 32 | 高知県庁 | 2,237万円 |
| 34 | 福井県庁 | 2,232万円 |
| 35 | 滋賀県庁 | 2,228万円 |
| 36 | 宮崎県庁 | 2,222万円 |
| 37 | 千葉県庁 | 2,215万円 |
| 38 | 秋田県庁 | 2,206万円 |
| 39 | 福島県庁 | 2,199万円 |
| 40 | 茨城県庁 | 2,196万円 |
| 41 | 埼玉県庁 | 2,192万円 |
| 42 | 北海道庁 | 2,191万円 |
| 43 | 広島県庁 | 2,181万円 |
| 44 | 長崎県庁 | 2,171万円 |
| 45 | 鳥取県庁 | 2,169万円 |
| 46 | 香川県庁 | 2,138万円 |
| 47 | 和歌山県庁 | 1,414万円 |
数字を読むときの注意
- これは実額です。 総務省「地方公共団体別給与等の比較」⑤退職手当の支給状況に 公表されている平均支給額を、千円単位から万円単位に換算しただけです
- 一般行政職の数値です。 教育公務員・警察職・技能労務職は含みません
- その年の退職者の平均であり、制度上の支給水準ではありません。 対象人数が少ない団体では単年で大きく振れます
- 市区町村は382団体のみの集計です。 定年退職者がいなかった団体は公表されていません。 集計できた団体は規模の大きい自治体に偏るため、 この平均は1,721団体全体の水準よりやや高く出ます
- 共済年金・退職等年金給付は含みません
- 詳細は出典と算出方法および免責事項をご覧ください