公務員の年収差はほぼ地域手当で決まると 東京23区の年収ランキングで、 公務員の年収差は給料本体ではなく諸手当の側で生じていることを見ました。
では、その諸手当は何の手当でできているのか。 総務省は団体ごとに手当の内訳を公表しているので、 市区町村1,721団体分を項目別に分解します。
この内訳は全職種の平均です。 他の記事で使っている 「平均給与月額」は一般行政職に限った数値なので、母集団が違います。 金額をそのまま足し引きせず、構成比と効き方を見るための数字として扱ってください。
諸手当61,808円の内訳
| 手当 | 平均月額 | 構成比 | 中央値 | 支給0円の団体 |
|---|---|---|---|---|
| 時間外勤務手当 | 21,677円 | 35.1% | 20,962円 | 7団体 |
| 扶養手当 | 8,307円 | 13.4% | 8,194円 | 0団体 |
| 管理職手当 | 7,707円 | 12.5% | 7,188円 | 1団体 |
| 地域手当 | 6,529円 | 10.6% | 40円 | 824団体 |
| 住居手当 | 5,259円 | 8.5% | 4,926円 | 6団体 |
| 通勤手当 | 5,145円 | 8.3% | 4,892円 | 6団体 |
| 特殊勤務手当 | 4,029円 | 6.5% | 395円 | 459団体 |
最大の項目は時間外勤務手当で、諸手当の35.1%を占めます。 地域手当の10.6%の3倍以上です。
「公務員は手当が多い」と言われるときに思い浮かべられがちな 扶養手当・住居手当は、合わせても13.4%+8.5%にとどまります。
地域手当は、大半の自治体には存在しない
上の表でいちばん目を引くのは地域手当の中央値40円です。 平均は6,529円ありますが、 824団体では支給額が0円です。
地域手当の記事で見たとおり、 支給率が0%の自治体は1,305団体あります。 支給額が0円の団体(824団体)と数が合わないのは、 支給率は一般行政職の団体支給率、支給額は全職種の平均という 別々の表から取っているためです。全職種には給料表の異なる職員が含まれます。
いずれにせよ、平均を押し上げているのは都市部の一部の自治体で、 多くの自治体の職員にとって、地域手当は「もらっていない手当」です。
年収差への効き方:地域手当と時間外はほぼ並ぶ
手当ごとに、団体の平均年収との相関を取りました。
| 手当 | 年収との相関 |
|---|---|
| 諸手当の合計 | +0.78 |
| 地域手当 | +0.69 |
| 時間外勤務手当 | +0.61 |
| 通勤手当 | +0.37 |
| 管理職手当 | +0.37 |
| 特殊勤務手当 | +0.09 |
| 住居手当 | +0.04 |
| 扶養手当 | -0.05 |
地域手当(+0.69)と時間外勤務手当(+0.61)が並びます。
これは地域手当の記事の結論を否定するものではありません。 地域手当は制度として外から決まる要因で、 受験先を選ぶ時点で確認できます。 時間外勤務手当は働き方の結果で、事前には分かりません。 同じくらい年収に効いているのに、性質がまったく違うということです。
一方、扶養手当(-0.05)と住居手当(+0.04)は 年収差をほとんど説明しません。 どの自治体でもほぼ同じ額が出ているので、団体間の差にならないためです。
地域手当のない自治体では、時間外が主役になる
地域手当が0%の1,305団体だけを取り出すと、構図がはっきりします。
| 全1,721団体 | 地域手当0%の1,305団体 | |
|---|---|---|
| 平均年収 | 592万円 | 575万円 |
| 諸手当の合計 | 61,808円 | 53,170円 |
| 時間外勤務手当 | 21,677円 | 19,762円 |
| 時間外と年収の相関 | +0.61 | +0.59 |
地域手当という要因を取り除いても、時間外勤務手当の効き方は変わりません。 県内のどこを受けるかで年収が変わるで見た 「地域手当が同じ自治体どうしでも県内で開きが残る」現象の、中身のひとつがこれです。
東京23区は例外
東京23区は全区が支給率20%なので、構成がまったく違います。
| 特別区23区 | 全1,721団体 | |
|---|---|---|
| 諸手当の合計 | 117,427円 | 61,808円 |
| 地域手当 | 60,565円 | 6,529円 |
| 時間外勤務手当 | 31,073円 | 21,677円 |
23区では地域手当が最大の項目で、時間外の約2倍あります。 全国では少数派の構成です。 「公務員の手当」を23区のイメージで語ると、 地域手当が1円も出ていない824団体の実態からは外れます。
受験先を選ぶときにどう使うか
- 地域手当の支給率は事前に確認できる。 自治体の公表資料に載っています(調べ方)
- 平均年収の高さの一部は残業の多さである。 時間外勤務手当が諸手当の35.1%を占める以上、 平均年収が高い自治体には「忙しい」という要素が混じっています。 同じ額面でも、時間あたりの単価は同じではありません
- 扶養手当・住居手当は自治体選びの判断材料にならない。 どこでもほぼ同じで、年収差にほとんど効いていません
数字を読むときの注意
- この内訳は全職種の平均です。 一般行政職に限った他の記事の数値とは母集団が違います
- 団体ごとの職員1人当たりの平均です。個人の受取額ではありません。 時間外勤務手当は残業をしない職員も含めて割った数字です
- 管理職手当・特殊勤務手当は職種構成に強く影響されます。 消防職・清掃職員などを多く抱える団体では特殊勤務手当が大きくなります
- 相関は因果ではありません。 都市部の自治体は地域手当も業務量も多く、 両方が同時に効いています
- 推計年収は平均給与月額×12ヶ月に期末・勤勉手当の年額(実額)を加えた換算値です。 算出式はデータの出典と算出方法に記載しています