公務員試験を受けるとき、「国家公務員か地方公務員か」「県庁か市役所か」で迷う人は多いはずです。 仕事の内容や転勤の有無で選ぶのが本筋ですが、年収がどう変わるのかも気になるところでしょう。
当サイトに収録している313の自治体・機関の実データで、この問いを検証しました。
数値は総務省「地方公務員給与実態調査」および人事院「国家公務員給与等実態調査」にもとづく推計値です。
区分別の年収
| 区分 | 機関数 | 平均 | 中央値 | 最高 | 最低 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 政令指定都市 | 20 | 692万円 | 692万円 | 748万円 | 648万円 | 26.7 |
| 国家公務員(中央省庁等) | 18 | 682万円 | 685万円 | 760万円 | 620万円 | 36.1 |
| 都道府県庁 | 47 | 657万円 | 650万円 | 812万円 | 608万円 | 35.9 |
| 市区町村 | 228 | 642万円 | 635万円 | 782万円 | 572万円 | 33.5 |
最も高い政令指定都市(692万円)と最も低い市区町村(642万円)の差は50万円です。
区分の差より、勤務地の差のほうが大きい
ここが重要な点です。区分間の差(50万円)より、同じ区分の中の差のほうが大きいのです。
- 市区町村の中での差:782万円 − 572万円 = 210万円
- 都道府県庁の中での差:812万円 − 608万円 = 204万円
- 国家公務員の中での差:760万円 − 620万円 = 140万円
- 政令指定都市の中での差:748万円 − 648万円 = 100万円
つまり「国家公務員を目指すか、市役所を目指すか」で変わるのは平均50万円ですが、 「どこの市役所か」では最大210万円変わります。
年収という一点だけで見るなら、区分の選択より勤務地の選択のほうが影響が大きい、という結果です。
この差の大部分は地域手当によるものです。 地方公務員の給与には、民間賃金水準に応じた地域手当が上乗せされ、 東京23区の20%を上限に地域ごとに段階的に設定されています。 給料表自体は自治体間で大きく変わらないため、 差として現れるのはほぼ地域手当と考えて差し支えありません。
中央省庁18機関の順位
国家公務員を目指す場合、どの省庁かによる差は次のとおりです。
| 順位 | 機関 | 推計平均年収 |
|---|---|---|
| 1 | 外務省 | 760万円 |
| 2 | 財務省 | 730万円 |
| 3 | 裁判所(裁判官・書記官) | 720万円 |
| 4 | デジタル庁 | 710万円 |
| 5 | 警察庁 | 705万円 |
| 6 | 国税庁 | 703万円 |
| 7 | 金融庁 | 700万円 |
| 8 | 内閣府 | 695万円 |
| 9 | 経済産業省 | 690万円 |
| 10 | 公正取引委員会 | 680万円 |
| 11 | 総務省 | 670万円 |
| 12 | 法務省・検察庁 | 660万円 |
| 13 | 国土交通省 | 655万円 |
| 14 | 厚生労働省 | 648万円 |
| 15 | 環境省 | 644万円 |
| 16 | 文部科学省 | 642万円 |
| 17 | 農林水産省 | 638万円 |
| 18 | 防衛省・自衛隊 | 620万円 |
1位の外務省と18位の防衛省では140万円の差がありますが、 これは省庁ごとに給料表が違うからではありません。 国家公務員の俸給表は職種別(行政職・公安職・専門行政職など)に定められており、 省庁ごとの職種構成・在職者の年齢構成・在外勤務手当などの違いが平均値の差として現れます。
外務省が高いのは在外勤務者を多く抱えることが、 防衛省が低いのは若年層の比率が高いことが、それぞれ主な要因と考えられます。 「外務省に入れば140万円高い」という意味ではない点に注意してください。
年収以外で決めるべき理由
ここまで年収で比較してきましたが、この数字だけで受験先を決めるのは勧めません。 理由は3つあります。
差が思ったより小さい。 区分間の差は50万円で、月額にすれば4万円ほどです。 40年間働く職業選択の判断材料としては、決定的な差とは言いにくい水準です。
年収は地域手当でほぼ決まる。 高い自治体は生活費も高い地域にあります。 可処分所得や生活水準で見ると、額面の差ほどの違いは残りません。
仕事の性質がまったく違う。 国家公務員は制度設計、都道府県は広域調整、 市区町村は住民に直接向き合う仕事が中心です。転勤の範囲も大きく異なります。 40年間続ける仕事として、この違いのほうが年収50万円よりはるかに重い、というのが率直なところです。
数字を読むときの注意
- これは推計値です。 平均給与月額 ×(12 + 4.45ヶ月)で年収換算しています。 期末・勤勉手当の支給月数は機関ごとに異なります
- 在籍職員全体の平均です。採用直後の年収はこれよりかなり低くなります。 受験先を選ぶ際に見るべきは初任給と昇給カーブですが、 この記事のデータからはそれを読み取ることはできません
- 職種による差は反映されていません。 一般行政職のほか技術職・公安職などが含まれます
- 退職手当・共済年金は含みません
- 313機関は全国のすべての自治体を網羅したものではありません