看護師・臨床検査技師・理学療法士といった医療技術職が民間企業への転職を考えるとき、 「年収は上がるのか」は避けて通れない論点です。
医療職の年収は民間のどこかで見たとおり、 医師を除く医療職は上場企業の分布の下のほうに位置します。 これは裏を返すと、上がる余地が大きいということでもあります。
この記事では感覚論を避け、上場企業3,790社を1社ずつ数える方法で、 どの業種なら年収が上がるのかを示します。
医療職側の数値は公表統計にもとづく推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
出発点:現在地によって「上がる確率」がまるで違う
| 現在の職種 | 推計平均年収 | この額以上の上場企業 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 薬剤師(勤務薬剤師) | 600万円 | 2,491社 | 65.7% |
| 地方公務員(看護・保健職) | 626万円 | 2,224社 | 58.7% |
| 放射線技師 | 520万円 | 3,203社 | 84.5% |
| 看護師(全国平均) | 510万円 | 3,281社 | 86.6% |
| 臨床検査技師 | 490万円 | 3,436社 | 90.7% |
| 理学療法士・作業療法士 | 410万円 | 3,707社 | 97.8% |
| 管理栄養士(病院勤務) | 380万円 | 3,754社 | 99.1% |
看護師の510万円を基準にすると、上場企業の86.6%がこれ以上を出しています。 理学療法士の410万円なら97.8%、管理栄養士の380万円なら99.1%です。
教員や公務員からの転職とは、話の前提が違います。 教員から民間へ転職すると年収はどうなるかでは 基準が680万円で「上場企業の45%が上回る」という五分五分の状況でしたが、 医療技術職では大半の上場企業が現在の年収を上回るところから始まります。
ただしこれは「どこでも上がる」という意味ではありません。 資格と経験が活きる業種は限られています。
資格が活きる業種は2つに絞られる
医療の資格と現場経験がそのまま評価される業種は、実質的に次の2つです。
| 業種 | 社数 | 平均 | 中央値 | 510万円以上の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 製薬・医療 | 81社 | 857万円 | 829万円 | 98% |
| 精密機器 | 45社 | 705万円 | 679万円 | 96% |
製薬・医療(857万円)は、看護師の全国平均510万円の1.7倍です。 この業種で医療資格が活きるのは次のような職種です。
- 臨床開発モニター(CRA) … 治験が計画どおり実施されているかを医療機関で確認する。 看護師・臨床検査技師の経験が直接評価される代表的な転職先
- 学術・メディカルアフェアーズ … 医薬品の情報を医療従事者に提供する。 薬剤師・看護師の知識が前提になる
- 品質管理・薬事 … 臨床検査技師の検査技術や精度管理の経験が接続する
精密機器(705万円)は医療機器メーカーが多く含まれます。
- アプリケーションスペシャリスト … 医療機器の使い方を医療従事者に指導する。 放射線技師・臨床検査技師の現場経験がそのまま強みになる
- 開発・薬事 … 機器の設計や承認申請
資格を使わないなら、選択肢は一気に広がる
資格に紐づかない転職であれば、上位の業種はもっと広くなります。
| 業種 | 社数 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 電力・ガス | 41社 | 848万円 |
| 証券・投資 | 36社 | 945万円 |
| 銀行・金融 | 131社 | 813万円 |
| 建設・不動産 | 288社 | 796万円 |
| 電機・電子 | 230社 | 748万円 |
| IT・通信 | 621社 | 690万円 |
ただし資格が評価されない分、未経験としての採用になります。 年収の上限は高くても、入り口の水準は職種と年齢で決まります。
「割合が高い」と「社数が多い」は別の話
転職先を絞るとき、この2つは混同されがちです。
- 資格が活きる業種:製薬・医療81社、精密機器45社
- 社数が多い業種:IT・通信621社、建設・不動産288社
製薬・医療は平均857万円と高いものの、81社しかありません。 求人の絶対数は多くなく、募集職種も専門性の要求が高い領域です。
一方で、資格を使わない道を選べば選択肢は桁違いに増えますが、 医療現場での経験は年収に直結しにくくなります。 どちらを取るかが、医療技術職の転職における最初の分岐点です。
規模も効く
業種と並んで効くのが企業規模です。
| 従業員数 | 社数 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 10,000人以上 | 63社 | 811万円 |
| 3,000〜9,999人 | 228社 | 840万円 |
| 1,000〜2,999人 | 536社 | 765万円 |
| 300〜999人 | 1,073社 | 672万円 |
詳しくは従業員数が多い会社ほど年収は高いのかで検証しています。
年収以外に変わること
数字だけでは決まらない部分について、事実として言えることを整理します。
夜勤がなくなります。 看護師の年収には夜勤手当が含まれており、 その比率は決して小さくありません。 額面が上がっても時間あたりの単価では見え方が変わる可能性があります。 逆に、夜勤による生活リズムの負担がなくなることを重視する人もいます。
資格の有効性は続きます。 看護師・臨床検査技師などの国家資格は 更新の必要がなく、民間に出ても失われません。 戻る選択肢が残ることは、他職種からの転職にはない条件です。
数字を読むときの注意
- 医療職側の数値は推計値です。 公表統計にもとづく編集部推計です
- 企業側の数値は在籍者全体の平均であり、中途入社時の提示額ではありません。 業種の平均が857万円でも、入社初年度がその額になるわけではありません
- 職種別の年収ではありません。 有価証券報告書に記載されるのは会社全体の平均です
- 上場企業に限った集計です。 未上場企業を含めた民間全体の水準はこれより低くなります
- 夜勤手当・当直手当の扱いは統計によって異なります
- 業種分類は当サイトが34区分に正規化したものです。基準は出典と算出方法に記載しています