教員から民間企業への転職を考えるとき、 「年収は上がるのか、下がるのか」は避けて通れない論点です。
この記事では感覚論を避け、上場企業3,782社を1社ずつ数えるという方法をとります。 公立小学校教員の平均年収680万円を基準に、 「これ以上を出している会社は何社あり、どこに集まっているのか」を示します。
教員側の数値は公表統計にもとづく推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
出発点:680万円以上の上場企業は1,715社ある
| 基準にする教員の区分 | 推計平均年収 | この額以上の上場企業 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 公立学校教員(東京都) | 768万円 | 988社 | 26.1% |
| 公立高校教員(全国平均) | 712万円 | 1,398社 | 37.0% |
| 公立中学校教員(全国平均) | 695万円 | 1,554社 | 41.1% |
| 公立小学校教員(全国平均) | 680万円 | 1,715社 | 45.3% |
| 公立学校教員(地方・平均) | 645万円 | 2,053社 | 54.3% |
小学校教員の680万円を基準にすると、上場企業の45.3%がこれ以上を出しています。 「転職すれば年収が上がる」とも「下がる」とも言い切れない、ほぼ半々の位置です。
ここで重要なのは、基準が違えば結論が変わることです。 地方勤務の教員(645万円)にとっては上場企業の54.3%が上回る相手ですが、 東京都の教員(768万円)にとっては26.1%しかありません。 同じ「教員」でも、転職で年収が上がる確率はまるで違います。
1,715社はどこに集まっているのか
680万円以上の1,715社を業種別に分解すると、偏りがはっきり出ます。 下の表は、その業種の中で680万円以上を出している会社の割合が高い順です (母数20社以上の業種に限定)。
| 業種 | 680万円以上 | 業種の総数 | 業種内の割合 | 業種の平均 |
|---|---|---|---|---|
| 証券・投資 | 30社 | 34社 | 88% | 957万円 |
| 電力・ガス | 32社 | 40社 | 80% | 851万円 |
| 製薬・医療 | 61社 | 81社 | 75% | 856万円 |
| 建設・不動産 | 185社 | 282社 | 66% | 790万円 |
| 銀行・金融 | 80社 | 127社 | 63% | 780万円 |
| 電機・電子 | 139社 | 229社 | 61% | 747万円 |
| 素材・化学 | 162社 | 290社 | 56% | 703万円 |
| 機械・設備 | 115社 | 213社 | 54% | 698万円 |
| 自動車・輸送機 | 42社 | 79社 | 53% | 694万円 |
| 物流・運輸 | 57社 | 114社 | 50% | 722万円 |
| 精密機器 | 22社 | 45社 | 49% | 706万円 |
| 商社・卸売 | 147社 | 304社 | 48% | 715万円 |
証券・投資では34社中30社(88%)が680万円以上を出しています。 一方、収録社数が最も多いIT・通信は606社中249社で41%、 サービス業は543社中142社で26%にとどまります。
つまり「民間に行けば上がる」のではなく、 どの業種に行くかで確率が3倍以上変わるというのが実データの姿です。
数が多い業種と、割合が高い業種は別
転職先を探すとき、この2つは混同されがちですが別の話です。
- 該当社数が多い業種:建設・不動産185社、素材・化学162社、商社・卸売147社、電機・電子139社
- 割合が高い業種:証券・投資88%、電力・ガス80%、製薬・医療75%
証券・投資は割合こそ88%と圧倒的ですが、そもそも34社しかありません。 求人の絶対数で考えれば、282社ある建設・不動産のほうが選択肢は多くなります。
割合が高い業種は「入れれば高い」、社数が多い業種は「入り口が広い」。 どちらを優先するかは、転職の緊急度と自分の経歴によって変わります。
教員の経歴が評価されやすい方向
年収の分布だけでは決まらない部分について、事実として言えることを整理します。
教員が民間で持ち込める経験は、 多人数に対する説明・進行の技術、年間単位のカリキュラム設計、 保護者や外部機関との折衝にあたる部分です。 これらは職種としては教育・研修、人材、営業、企画のあたりに対応します。
ただし当サイトが持っているのは組織ごとの平均年収であり、 職種別の初任給や中途採用時の提示額ではありません。 「業種の平均が790万円だから転職すれば790万円になる」ということではない、 という点は明確にしておく必要があります。
平均年収はあくまで在籍者全体の平均です。 中途入社の初年度は、その会社の平均を下回るのが通常です。
年収が上がる転職の条件
ここまでの数字を整理すると、条件は3つに絞れます。
- 業種を選ぶ。 証券・投資、電力・ガス、製薬・医療、建設・不動産、銀行・金融であれば、 680万円以上を出している会社の割合が6割を超えます
- 規模を選ぶ。 従業員1万人以上の企業の平均は901万円、 1,000〜2,999人は721万円、300〜999人は651万円です (従業員数と年収の関係で詳しく検証しています)
- 現在地を正しく把握する。 東京都の教員(768万円)と地方の教員(645万円)では、 同じ転職先でも上がるか下がるかが逆転します
逆に言えば、業種と規模を選ばずに転職した場合、年収が下がる確率のほうが高い というのが3,782社の分布から読み取れることです。
数字を読むときの注意
- 教員側の数値は推計値です。 公表統計の平均給与月額から年収換算しています
- 企業側の数値は在籍者全体の平均であり、中途入社時の提示額ではありません
- 上場企業に限った集計です。 未上場企業を含めた民間全体の水準はこれより低くなります
- 退職手当の差は含みません。 公務員の退職手当は民間と制度が異なるため、 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
- 業種分類は当サイトが34区分に正規化したものです。分類の基準は出典と算出方法に記載しています