「教員の給料は高いのか、低いのか」は繰り返し議論になりますが、 比較の相手として持ち出されるのはたいてい「民間の平均給与」という1つの数字です。
民間企業の年収は上下に大きく散らばっているので、 1つの平均値に押しつぶしてしまうと、実際の位置関係が見えなくなります。
この記事では、公立学校教員の平均年収を上場企業3,782社の分布の中に置いて、 「何社がこれを上回るのか」を直接数えます。 当サイトは有価証券報告書から取得した3,782社の平均年収を1社ずつ持っているので、 順位を数えることができます。
教員の数値は人事院・総務省の公表統計にもとづく推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
結論:全国平均は真ん中よりやや上、東京都は上位26%
| 区分 | 推計平均年収 | 上場企業3,782社の中での位置 | この額以上の企業数 |
|---|---|---|---|
| 公立学校教員(東京都) | 768万円 | 下位から73.9% | 988社 |
| 公立高校教員(全国平均) | 712万円 | 下位から63.0% | 1,398社 |
| 公立中学校教員(全国平均) | 695万円 | 下位から58.9% | 1,554社 |
| 公立小学校教員(全国平均) | 680万円 | 下位から54.7% | 1,715社 |
| 公立学校教員(地方・平均) | 645万円 | 下位から45.7% | 2,053社 |
小学校教員の680万円は、上場企業3,782社のうち1,715社がこの額以上という位置です。 中央値(662万円)をわずかに上回る、ほぼ真ん中の水準といえます。
一方、東京都の教員768万円は上位26%に入ります。 上場企業のうち、この額に届く会社は988社しかありません。
校種によって32万円動く
同じ「教員」でも、小学校・中学校・高校で年収は段階的に上がります。
- 小学校 680万円 → 中学校 695万円(+15万円)
- 中学校 695万円 → 高校 712万円(+17万円)
小学校と高校の差は32万円です。 これは高校教員のほうが給料表の格付けが高いことに加え、 年齢構成の違いも影響しています。教員は年齢とともに給与が上がる仕組みなので、 平均年齢が高い校種ほど平均年収も高く出ます。
分布上の位置で見ると、小学校の下位54.7%から高校の下位63.0%まで、 8.3ポイント動きます。社数にして317社分です。
校種の差より、勤務地の差のほうが大きい
より大きく効くのはどこで働くかです。
東京都の768万円と地方平均の645万円では123万円の差があり、 小学校と高校の差(32万円)の4倍近くになります。
分布上の位置では、東京都が下位73.9%、地方平均が下位45.7%。 28.2ポイント、社数にして1,065社分の開きです。 東京都の教員は上場企業の上位4分の1に入りますが、 地方平均は中央値を下回ります。
この差の大半は地域手当によるものです。 公立学校教員の給与は地方公務員の給料表にもとづき、 民間賃金水準の高い地域ほど支給率が高くなる調整が入ります。 東京23区の20%を上限に段階的に設定されているため、 同じ校種・同じ経験年数でも勤務地によって年収が変わります。
つまり「教員だからこの年収」ではなく「どこの教員か」で決まる部分が大きい、 というのが実態に近い見方です。
民間との比較で見落とされがちなこと
上場企業3,782社の年収分布は、次のように大きく開いています。
| 位置 | 平均年収 |
|---|---|
| 下位10% | 492万円 |
| 下位25% | 558万円 |
| 中央値 | 662万円 |
| 上位25% | 775万円 |
| 上位10% | 923万円 |
| 上位5% | 1,044万円 |
| 上位1% | 1,419万円 |
下位10%から上位1%まで2.9倍の開きがあります。 これに対し、公立学校教員は地方平均645万円から東京都768万円まで1.19倍です。
この「散らばりの小ささ」が、教員という職の年収面での特徴です。 上振れの余地は小さいかわりに、下振れも小さい。 民間で上位10%(923万円以上)に届くのは10社に1社ですが、 教員でその水準に達する経路は基本的にありません。
なお、ここで比較しているのは上場企業です。 上場企業は日本の企業全体のごく一部で、給与水準は相対的に高い集団です。 未上場の中小企業を含めた民間全体と比べれば、教員の相対的な位置はこれより上がります。
数字を読むときの注意
- これは推計値です。 公表統計の平均給与月額から年収換算しており、実額とは差が生じます
- 在籍者全体の平均です。新規採用の教員はこれよりかなり低く、 管理職(校長・教頭)はこれより高くなります
- 部活動の指導等は反映されていません。 教員には時間外勤務手当が支給されず、 かわりに教職調整額(給料月額の4%)が一律に支給される仕組みです。 労働時間あたりで見た場合の水準は、この金額から受ける印象と異なります
- 退職手当・共済年金は含みません。 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
- 企業側の数値は有価証券報告書の単体の平均年間給与です。連結子会社は含みません