警察官や消防士の年収は「安定しているが特別高くはない」と語られがちです。 しかしその根拠として示されるのは、たいてい全国平均という1つの数字です。
この記事では、警察官・消防士の平均年収を上場企業3,782社の分布の中に置いて、 何社がその額以上を出しているのかを直接数えます。 そのうえで、全国平均と都市部で位置がどれだけ動くかを見ます。
数値は総務省・人事院の公表統計にもとづく推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
結論:全国平均は真ん中、都心は上位2割
| 区分 | 推計平均年収 | 上場企業3,782社の中での位置 | この額以上の企業数 |
|---|---|---|---|
| 消防士(東京消防庁) | 828万円 | 下位から81.9% | 686社 |
| 警察官(東京都警視庁) | 815万円 | 下位から80.4% | 740社 |
| 警察官(神奈川県警) | 748万円 | 下位から69.7% | 1,146社 |
| 警察官(大阪府警) | 735万円 | 下位から67.3% | 1,235社 |
| 消防士(政令市平均) | 718万円 | 下位から64.3% | 1,351社 |
| 警察官(全国平均) | 700万円 | 下位から60.2% | 1,507社 |
| 消防士(全国平均) | 682万円 | 下位から55.4% | 1,685社 |
| 警察官(地方・平均) | 660万円 | 下位から49.5% | 1,911社 |
| 消防士(市町村・平均) | 645万円 | 下位から45.7% | 2,053社 |
全国平均で見ると、警察官700万円は上場企業の下位60.2%、 消防士682万円は下位55.4%です。中央値(662万円)をやや上回る位置にあります。
ところが東京消防庁の828万円は上位18%、警視庁の815万円は上位20%に入ります。 この額以上を出している上場企業は、それぞれ686社・740社しかありません。
同じ職業で、位置が36ポイント動く
最も注目すべきは同一職種内の開きです。
消防士だけを見ると、東京消防庁828万円と市町村平均645万円で183万円の差があります。 分布上の位置では下位81.9%と下位45.7%で、36.2ポイント。 社数にして1,367社分です。
警察官も同様で、警視庁815万円と地方平均660万円の差は155万円、 分布上では30.9ポイント、1,171社分の開きがあります。
「警察官の年収」「消防士の年収」という言い方で1つの数字を出すこと自体に無理がある、 というのがこのデータから言えることです。 市町村消防の消防士は上場企業の中央値を下回りますが、 東京消防庁の消防士は上位2割に入ります。同じ職名でも別の水準です。
なぜここまで開くのか
差の大部分は地域手当で説明できます。
警察官・消防士の給与は地方公務員の給料表にもとづき、 民間賃金水準の高い地域ほど支給率が高くなる調整が入ります。 東京23区の20%を上限に段階的に設定されているため、 同じ階級・同じ勤続年数でも勤務地によって年収が変わります。
加えて、警察官・消防士には一般行政職とは別の公安職・消防職の給料表が適用され、 一般行政職より水準が高く設定されています。 実際、当サイト収録の「警察・消防」区分11件の平均は712万円で、 市区町村職員の平均642万円を70万円上回ります。
つまり「危険を伴う職務だから高い」という部分と、 「大都市だから高い」という部分の両方が重なっています。
民間の分布と比べたときの特徴
上場企業3,782社の年収分布は次のように開いています。
| 位置 | 平均年収 |
|---|---|
| 下位10% | 492万円 |
| 下位25% | 558万円 |
| 中央値 | 662万円 |
| 上位25% | 775万円 |
| 上位10% | 923万円 |
| 上位5% | 1,044万円 |
| 上位1% | 1,419万円 |
上場企業は下位10%から上位1%まで2.9倍開いています。 これに対し、消防士は市町村平均645万円から東京消防庁828万円まで1.28倍、 警察官は地方平均660万円から警視庁815万円まで1.23倍です。
民間より散らばりは小さいものの、 公務員のなかでは比較的大きな幅を持っている点が特徴です。 参考までに、市区町村職員228自治体の開きは1.37倍 (市区町村職員の平均年収)で、 警察・消防はこれよりやや狭い範囲に収まっています。
なお、ここで比較しているのは上場企業です。 上場企業は日本の企業全体のごく一部で給与水準は相対的に高いため、 未上場企業を含めた民間全体と比べれば、警察官・消防士の相対的な位置はこれより上がります。
数字を読むときの注意
- これは推計値です。 公表統計の平均給与月額から年収換算しており、実額とは差が生じます
- 在籍者全体の平均です。採用直後はこれよりかなり低く、上位階級はこれより高くなります
- 超過勤務手当・特殊勤務手当の扱いは組織ごとに異なります。 交替制勤務や災害出動に伴う手当は勤務実態によって変わるため、個人差が大きい部分です
- 退職手当・共済年金は含みません。 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
- 企業側の数値は有価証券報告書の単体の平均年間給与です。連結子会社は含みません