技術職・専門職として公的機関で働いている人が民間への転職を考えるとき、 判断材料になるのは「自分の今の年収が民間のどのあたりにあるか」です。

この記事では、公的機関の技術職・専門職の年収を 上場企業3,782社の分布に重ねて位置を確認し、 そのうえでどの業種なら年収が上がるのかを業種別の実データで示します。

公的機関側の数値は公表統計にもとづく推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。

出発点:技術職・専門職の現在地は職種で大きく違う

職種 推計平均年収 上場企業3,782社の中での位置 この額以上の企業数
国立大学法人教員(教授) 900万円 下位から88.5% 435社
独立行政法人(JAXA・産総研等) 750万円 下位から70.2% 1,127社
国立大学法人教員(准教授) 720万円 下位から64.5% 1,342社
防衛省技官・技術研究本部 680万円 下位から54.7% 1,715社
薬剤師(勤務薬剤師) 600万円 下位から34.6% 2,473社
国公立病院看護師(全国平均) 568万円 下位から26.9% 2,763社
放射線技師 520万円 下位から15.7% 3,188社
臨床検査技師 490万円 下位から9.6% 3,420社
理学療法士・作業療法士 410万円 下位から2.2% 3,698社
管理栄養士(病院勤務) 380万円 下位から0.9% 3,747社

「技術職・専門職」とひとまとめにできないことが、この表からはっきりします。

研究・工学系(教授900万円、独立行政法人750万円、防衛省技官680万円)は 上場企業の中央値(662万円)を上回る位置にあります。 一方、医療技術職は分布のかなり下に位置します。 理学療法士・作業療法士の410万円以上を出している上場企業は3,698社、 つまり上場企業の97.8%がこれを上回ります。

この差は資格の難易度や社会的な必要性を表すものではなく、 適用される給料表と、その職種の労働市場の需給を反映した結果です。

年収が上がりやすい業種は6つに絞れる

上場企業3,782社を業種別に分け、 680万円以上を出している会社の割合が高い順に並べると次のようになります。

業種 社数 平均 中央値 680万円以上の割合
証券・投資 34社 957万円 870万円 88%
電力・ガス 40社 851万円 835万円 80%
製薬・医療 81社 856万円 829万円 75%
建設・不動産 282社 790万円 758万円 66%
銀行・金融 127社 780万円 720万円 63%
電機・電子 229社 747万円 711万円 61%
素材・化学 290社 703万円 693万円 56%
機械・設備 213社 698万円 691万円 54%
自動車・輸送機 79社 694万円 686万円 53%
精密機器 45社 706万円 679万円 49%
IT・通信 606社 681万円 652万円 41%
サービス 543社 618万円 584万円 26%
小売・流通 311社 568万円 542万円 19%

技術系の経歴が接続しやすい業種にしぼると、 電力・ガス(80%)、製薬・医療(75%)、建設・不動産(66%)、電機・電子(61%)、 素材・化学(56%)、機械・設備(54%)の6つが上位に来ます。

一方、IT・通信は606社と選択肢が最も多いものの、680万円以上は41%にとどまります。 「技術職ならITに行けば上がる」という前提は、 少なくとも会社の平均年収という指標では裏づけられません。

医療技術職の場合、業種を変えないと動かない

放射線技師520万円、臨床検査技師490万円という水準は、 上場企業の下位16%・下位10%にあたります。

同じ資格を活かせる転職先として自然に浮かぶのは医療機関ですが、 そこは公的機関と同じ給与水準の市場です。 分布上の位置を動かすには、業種そのものを変える必要があります。

データ上、資格と経験が接続しうる高年収帯の業種は次の2つです。

  • 製薬・医療(81社・平均856万円・75%が680万円以上) 臨床開発、学術、品質管理などの職種が該当します
  • 精密機器(45社・平均706万円) 医療機器の開発・薬事・アプリケーションスペシャリストなどが該当します

製薬・医療の平均856万円は、放射線技師520万円の1.6倍にあたります。 ただし社数は81社と限られており、募集職種も専門性の要求が高い領域です。

「割合が高い」と「社数が多い」は別の話

転職先を絞るとき、この2つは混同されがちです。

  • 割合が高い業種:証券・投資88%、電力・ガス80%、製薬・医療75%
  • 社数が多い業種:IT・通信606社、サービス543社、小売・流通311社、素材・化学290社

証券・投資は88%と圧倒的ですが、そもそも34社しかありません。 一方でIT・通信は606社あり、41%でも249社が680万円以上を出しています。 社数で見れば、IT・通信のほうが電力・ガス(32社)より選択肢は多いことになります。

割合が高い業種は「入れれば高い」、社数が多い業種は「入り口が広い」。 どちらを優先するかは、転職の緊急度と自分の専門領域によって変わります。

規模も効く

業種と並んで効くのが企業規模です。 従業員数別の平均年収は次のとおりです。

従業員数 社数 平均年収
10,000人以上 325社 901万円
3,000〜9,999人 476社 789万円
1,000〜2,999人 786社 721万円
300〜999人 953社 651万円
100〜299人 574社 638万円
100人未満 231社 662万円

1万人以上の企業(901万円)と300〜999人の企業(651万円)では250万円の差があります。 詳しくは従業員数と年収の関係で検証しています。

業種と規模の両方を選べば、年収が上がる確率は大きく変わります。 逆に、どちらも選ばずに転職した場合、 現在地が中央値より上にある職種(研究・工学系)では下がる可能性のほうが高くなります。

数字を読むときの注意

  • 公的機関側の数値は推計値です。 公表統計の平均給与月額から年収換算しています
  • 企業側の数値は在籍者全体の平均であり、中途入社時の提示額ではありません。 業種の平均が856万円でも、入社初年度がその額になるわけではありません
  • 職種別の年収ではありません。 有価証券報告書に記載されるのは会社全体の平均であり、 技術職だけを取り出した数値は公表されていません
  • 上場企業に限った集計です。 未上場企業を含めた民間全体の水準はこれより低くなります
  • 退職手当・共済年金は含みません。 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
  • 業種分類は当サイトが34区分に正規化したものです。基準は出典と算出方法に記載しています

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